宗教と婚前契約(憲法20条「信教の自由」との関係)

婚約者が、宗教に入っている(もしくは、婚約者は入っていなくても両親や親族などが入っている場合など)結婚を決断する上で大きな問題となり得ます。

これは、日本だけではなく、世界的にみても同じことが言えます。(日本の方が、特定の宗教に入っていない分、問題とならないケースが多いですが。)

プリナップ協会へも、宗教の問題で婚前契約書の作成を希望される方がいらっしゃいますので、宗教関連について婚前契約を作成する際の注意点などまとめたいと思います。

 

憲法20条 「信教の自由」との関係

日本の憲法では、信仰の自由、宗教活動の自由というのが権利として認められています。

個人を尊重するための条文です。

ですので、たとえ当人同士が同意していても「宗教活動はしない」といった内容の婚前契約は作成できません。

 

では、どうすればいいのか…

まずは、お相手が入っている宗教の実態を確かめる必要があると思います。

宗教活動にもいろいろあります。何よりも宗教(とくに新興宗教)は、実態が良くわからないがために、イメージがよくありません。

ほとんど活動をしない宗教もありますし、毎週活動がある宗教もあります。
お布施の問題もあります。

ただ否定するのではなく、どんな活動をするのかを把握することは大切です。

裁判でも、過度なお布施や家庭を顧みない宗教活動については、離婚を認めています。
ですので、行き過ぎた行為を防止するための内容でしたら婚前契約にも記載が可能ということになります。

 

公正証書若しくは宣誓認証という選択

通常、プリナップ協会で作成する婚前契約は公正証書として作成しています。
ですが、信仰の自由との関係で、お相手に強制できるのは、「自分の信仰の自由を妨げる限度において」という制限があります。

※自分の信仰の自由というのは、特定の宗教に入らない信仰の自由というのも含みます。

お相手の信仰の行動を制限することについては、その限度を判断するのが非常に難しいです。

宗教関連の内容については、あくまでもお互いの良心に誓うという意味合いが強いことから「宣誓認証」をお勧めすることがあります。

 

宣誓認証について
公正証書は、お二人の契約という法律行為を公正証書として作成します。
お二人の間で、合意した内容について、お二人で契約として約束しており、これに対する違反については損害賠償等の制裁が生じます。

宣誓認証は、お二人で合意しているわけではなく、相手方に対し、ご自分自身が宣誓し、このとおりのルールとして遵守することを誓うというものです。契約しているわけではないので、強制できるわけではありません。

ただし、誠意やお二人の間でのルールとしての誓いの意味はあります。

また、宣誓した書面は、公証役場で少なくとも20年間は保存されます。

公証役場で掛かる費用も公正証書だと内容により変動するのに対し、宣誓認証は一律1万1000円です。

 

婚前契約作成の詳しい手続き・費用についてはこちら

 

参考となる判例
「夫自身の信仰と相いれない信仰を持つ者(この場合妻)の信仰に基づく行為によりそれが夫の信教の自由を妨害するものでない限り寛容であるべきことを要求しているとされています(最高裁昭和63・6・1判決)

 

※結婚を機に宗教からの脱会をご検討の方、脱会届を内容証明郵便で送付する手続きも業務として行っております。詳しくはお問い合わせください。